静岡県知的障害者福祉協会 会長
池谷 修
今回のギャラリー展はコロナ禍の中で行われた。本年度の事業計画をつくる段では「中止やむない」であった。しかし、担当理事が鋭意奮起され、いつものように実行委員会を何回か開催し、各委員の知恵が結集され、このような少し形を変えながらもギャラリー展が開催されたことは大変喜ばしいことだ。ありがとうございます。
また、このような状況なので作品の出品数が例年より極端に減少することを覚悟していた。ところが、実際の出品数は絵画181点(171)、陶芸32点(39)、工芸97点(100)、フリー21点(18)、合計331点(328) {*( )内数字は、昨年度数}となり、なんと昨年よりも総出品数は増えていた。コロナ禍の中で、何かと気ぜわしいことも多かったであろうが、本当に皆様の奮起に頭が下がる。感謝致します。
ところで、今回は正副会長も作品の“評価”をするようにと依頼があった。絵心などない私ができるのかと思ったが、以前障害のある子のお母さんに『心は原書』という言葉をいただいたことを思いだした。
この言葉の意味は(多分ではあるが)人は自身の置かれている状況や培われてきた価値観で物事(自然であれ、書籍であれ)を観ている。自身の心がそれらを観て、感じ、解釈している。そう考えると、作品の良し悪しは今の私の感じ方や価値観がベースになるのではないかと思った。
なので、作品の“評価”は審査員によって様々あると思う。仮に賞をいただけなかったとしても残念がることはないし「いつか私の作品をビビッと感じてくれる審査員を待つのも手だぞ」と余裕を持っていただき、次回の作品作りに繋げるのも良いのではないかと思う。
さて、皆さーん。思う存分この愛護ギャラリー展を楽しみましょう。

1966年に静岡県知的障害者福祉協会(当時名:静岡県精神薄弱者愛護協会)が発足してから、「施設入所者作品展」「愛護まつり」などの呼び方で各部会で作品展を実施していました。その後、県内の会員施設から作品を一同に集めて作品展を開催しようということになりました。展示会名を命名するにあたり、利用者が創り上げた作品は、彼らが障がい者だということは関係なく彼らの表現した結果生まれた「作品」であるという考えから、「障がい者アート展」などという「障がい」をうたった展示会名にはしたくないと考えました。そこで当時の実行委員の1人が「固定資産としての展示場はないけれど、作品を集めて期間限定ではあるけれど、展示会を開くという意味で、ギャラリーと名付けてみたらどうか」と提案がありました。そして、ゆくゆくは、この作品展が成熟し、いつか本当の「ギャラリー」が持てるようにという希望も込めて、当時協会名の一部にあった「愛護」と「ギャラリー」を掛け合わせ「愛護ギャラリー展」と名付けられました。
1993年(平成5年)第1回愛護ギャラリー展が開催されました。当時の会長の八谷裕司氏の巻頭言には「作品の生まれる過程は、機能訓練の一環として制作されたもの、治療教育的な目的をもったもの、本人の趣味として制作されたもの等さまざまなものです。(途中省略)これまでの努力の積み重ねは、年とともに作品の質、内容が向上し素晴らしいものが生まれてくるようになった」とあります。
どんなに重い障がいを持った人でも表現をすることはできますが、それには、指導が必要です。愛護ギャラリー展には、指導された絵を飾ろうということになり、1981年(昭和56年)職員研修所講座「絵画療法講座」が始まりました。こうして、職員と利用者が一体となって作り上げる作品展へと発展していったのです。
静岡県知的障害者福祉協会は、一握りの天才を発掘することではなく、全ての利用者さんの生活を向上するためにあります。最初は、鉛筆さえも持つことさえ出来なかった人が、次第に目線と鉛筆の筆先が合うようになり、10年にわたって指導を受けた結果、すばらしい絵が描けるようになったという例も多くあります。
こうして、一部の天才ばかりに目を向けることなく、利用者さんの表現を守り、底上げするためにこれまで28回もの展示会を開催してきました。
そして、このような職員の熱意と利用者の努力の軌跡には、毎年審査員や展示会に訪れる観覧者の感動を呼んできました。
静岡県知的障害者福祉協会の会員の皆様、ご利用者の皆様 お元気で毎日お過ごしのこととお慶び申し上げます。
第29回愛護ギャラリー展の実行委員長を務めさせていただいています、文化担当理事中村文久でございます。
恒例となっているこの愛護ギャラリー展ですが今回は「新型コロナウイルス」の影響を受け
今までにはないWEBでの開催といたしました。
私も実行委員の皆様も初めての経験であり事務局にも事前準備から今日にいたるまでご負担をおかけしました。
ここに開催できる運びとなり感謝申し上げます。
さてWEBでの開催となりますと世界中の人々に出品作品を見てもらえることになります。これは今までのギャラリー展では考えられないことです。これは大きなチャンスでもあります。きっと皆さんの作品を見て感動してくれる人たちが大勢いるでしょう。
私も今までにはない大きな「成果」があると楽しみにしています。
静岡県知的障害者福祉協会 文化担当理事
中村 文久
(社会福祉法人明光会 障害者就業・生活支援センターさつき)
会長 | 池谷 修 |
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担当理事 | 中村 文久 |
事務局長 | 青野 剛明 |
実行委員 | 佐藤 淳 沼津のぞみの里 |
知的障害児者施設等における日頃の文化・芸術活動の成果を広く公表し、障害児者や施設に対する県民の理解と支援を促し、併せて施設利用者等の意欲と施設職員の士気の高揚を図るため、知的障害児者の絵画等の展示会を開催する。
本年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、プラサヴェルデで開催を予定していた展示会を中止とし、代わりにWEB上で開催する。また、優秀作品については、賞を授与する。