愛護ギャラリー展30周年に寄せて

数々の出会いと「愛護」が意味するもの

志賀口弘元会長からのメッセージ

2022年7月21日(木)志賀口弘元会長と八谷重之顧問に社会福祉法人和光会が運営する「Nカフェ」にお集まりいただき、愛護ギャラリー展について語っていただきました。
以下、志賀口元会長が語ってくださったことを事務局でまとめました。

 

1. 創成期の愛護ギャラリー展

当初は、地区ごとで、行事の際に展示していました。落合英男先生のご指導のもとに八谷祐司元会長、山内令子氏や三谷末光氏達と全県で作品を集めて展示しようと始めたのが、後に「愛護ギャラリー展」として発展することになりました。このころの静岡県知的障害者福祉協会の活動は活発で、失敗したら怒られもしましたが、頑張ると本当に褒めていただきました。「やろう!」と決めたことは、みんなで一丸となって、まとまり、強いきずなで結ばれ、成し遂げていきました。当時は、全国的に見ても障害者の芸術活動をこの規模でやっているところは珍しく、その後も日本知的障害者福祉協会の集まりにいくたびに、褒めてもらっていました。先駆けた取り組みは、協会の財産であり、目玉となったことは、私の誇りです。皆様の御協力に感謝申し上げます。

 

2. いろいろな葛藤を抱えて・・・

愛護ギャラリー展が始まり、多くの会員施設に出展のお願いをしている時に、ある施設からこんなことを言われました。「うちは、障害の重い利用者ばかりだから、芸術活動なんてできません。」と。それは、違うと思いました。「良い作品」を作ることが目的ではない、どんなに障害が重くても表現をすることはできるのだと。この想いを皆さんに知っていただきたくて丁寧に説明させていただきました。

(そのようなご尽力のおかげで、今や本当にたくさんの施設から出展していただき、30回を超える伝統ある作品となりました(事務局))

 

3. 落合先生との出会い

作品展を開催する前から落合先生による「絵画療法」が行われていました。今、こうして30年間もずっと継続して、愛護ギャラリー展を開催できるのは、落合先生のご指導のおかげであり、落合先生なくして実現はできなったでしょう。愛護ギャラリー展は、静岡県知的障害者福祉協会の宝であると同時に、落合先生の情熱そのものだと言いいいと思っています。

 

 

4. ねむの木学園 宮城まり子氏との思い出

宮城さんとの思い出は、語りつくせないほどたくさんあります。宮城さんは、プロ意識のかたまりのような方でした。ねむの木学園も最初は愛護ギャラリー展にも作品を出展していただいていましたが、宮城さんは、国内のみならず、国際的にも通じる芸術活動を目的とし、絵画作品だけでなく歌やダンスといったステージでの表現活動まで幅広く障害者をアーティストとして育成されました。常に前向きで、どんどん周りをひっぱる、リーダーシップにあふれる方でした。

(志賀口元会長と宮城まり子氏がお話しされているところを何度かお見かけしましたが、本当に仲良さそうにお話しをされていました。(事務局))

 

5. 「愛護」が意味するもの

平成10年に名称を「静岡県知的障害者愛護協会」と名称を変更してから、平成20年に現在の名称になるまで「愛護」を名乗ってきました。今や「愛護」というと、「可愛がって、かばい、守ること」などという意味で使われることが多くなりましたが、この言葉ができた、本当の意味は全く違います。

「愛護」とは、「わけへだてなく人を愛し、護る」という高い理念を持っている言葉です。ただただ可愛がり、かばって庇護するという意味ではありません。しかし残念ながら時代の流れで世間での「愛護」の意味が変わってしまったので、当協会の協会名も全国に合わせて変更することになりましたが、障害者の表現する場であるこのギャラリー展では、「愛護」を残そうということになったのです。

 

6. 静岡から全国へ

私は、日本知的障害者福祉協会で役員を長年務めたので、今でも全国に多くの同じ気持ちを持つ仲間がたくさんいます。会長になってからも静岡で困りごとがあると、相談でき、またいろいろな視点での考え方を知ることができました。私の財産になっています。最近は、会長任期の規定もあり、静岡県から全国に役員を出すことがなくなったと聞いています。静岡県内でやるべき役割を果たすことは当然ですが、これからを担う会員の皆さんには、決して井の中の蛙にはなってほしくないです。静岡だけで完結はしません。他県を見て、世界を見て、広がりを感じてほしいです。もっともっとたくさんの絆を築いてほしいですね。

 

 

7,これからの静岡県知的障害者福祉協会に求めること

将来を見渡し、行動するには、今まで築いてきた長い歴史を時には振り返り、その中で今を見つめてほしいです。コロナでつながりが薄れている今こそ、諸先輩たちが築いてくださった絆の大事さ、つながること、まとまることの大事さを改めて見つめ直してみて下さい。

 

約2時間、ゆったりとお話を聴かせていただきました。
本当に静岡県知的障害者福祉協会のことを大事に想ってくださり、今、こうしてあるのは、60年以上にわたり、たくさんの先輩が丁寧に、大切に紡いでくださったおかげであるのだということが分かりました。同席していただいた八谷顧問は、「志賀口元会長は、会長時代もどんな時でも常に穏やかで、落ち着いて、いつも大丈夫だからと声をかけてくださった。意見の違いに葛藤している姿を散々見ていたが、そんなことは微塵も感じさせず、いつも若手が伸び伸びと働きやすいように環境を整えていただいた」とおっしゃっていました。

それは、今でも全く変わらず、凛々しく、大きな包容力で優しいほほえみをたたえながらお話していただきました。
ありがとうございました。(事務局)